これなに
大学のアントレプレナーシップという講義で、アストロスケール社の創業者兼CEOの岡田さんの講演があった。創業に関するいくつかの点で、非常に示唆に富んでいたので、印象に残った点を忘れないように残しておく。
アストロスケールは、宇宙機の安全航行の確保を目指し、次世代へ持続可能な軌道を継承する為、低軌道(LEO)から静止軌道(GEO)までに渡りスペ ースデブリ(宇宙ごみ)除去・軌道上サービスに取り組む世界で唯一の民間企業です。 2013 年の創業以来、軌道上で増加し続けるデブリの低減・除去策として、今後打ち上がる人工衛星が寿命を迎えたり恒久故障 の際に除去を行う EOLサービスや、既存デブリを除去する為の ADRサービス(Active Debris Removal)、衛星寿命延命措置(LEX)や宇宙空間上での宇宙状況把握(Space Situational Awareness:SSA)、軌道上サービスの実現を目指し技術開発を進めてきました。
創業から英語を喋れ、グローバルで戦え
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英語を使わないと市場のカバレッジは取れない
- 日本のGDPは世界の5%、そして3%に。残りの97%は日本語では取れない
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英語を使わないと技術力で勝てない
- 日本のエンジニアは毎年1万人しか生まれないが、インドでは毎年10万人生まれている。たった1万人を日本企業で取り合っている。
- エンジニアが英語のドキュメントをかけないと、外部への発信・コミュニケーションが進まない
- 経験上、海外のエンジニアの方が競争が激しい為、技術力が高い
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英語を使わないとマネーゲームで負ける
- 日本で50億調達した時、海外の競合は500億調達する
- 技術的に勝っていても、開発スピード・市場への提供速度で負ける
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「初期の日本人社員が英語喋れない」→ 「知らん、とにかく喋れ」
- そんなこと気にするな、とにかく英語を喋れ
- 2年もやっていれば、誰でも喋れる
- 喋るか喋らないかが問題で、喋れるか喋れないかではない。
日本の消費市場が確実に縮小していく中で、グローバルで戦う必要性、市場のカバレッジ以上に組織として英語を喋れないデメリットなど、実際にその分野で特許技術を持っていた企業を経営していたのにも関わらず、海外企業にお金・技術・人の競争で負けた岡田さんの話は、非常に説得力があった。
一人目エンジニアの見つけ方
宇宙産業という未知のドメインでどう技術者を見つけるか、仲間を見つけるかについて。個人的にこの話が1番好きだった。
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宇宙産業のConferenceに参加し、参照の論文を読み込む
- 岡田さんは、300の論文を精読、700を乱読した
- Conferenceでは、何が今宇宙のHot topicなのか?を知る。未来を生きる人間達の関心を知る
- 論文の読み込みを重ねることで、言語レベルで宇宙について理解する。
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課題に対する仮設を言語レベルで立てる
- この時の仮設は後から振り返るとかなり拙いものだ
- だが、自分の頭で考え、問題意識を持つことが次のステップに繋がる。正しさではなく、ひたむきさが重要
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論文の著者(=先端の人間)にコンタクトを取り、仮設をぶつける。
- 岡田さんはこれをするために、ワールドツアーを3回行った。
- 多くの著者が30分ならOKというが、会うと2時間話を聞いてくれる(こともある)
- 一回目のワールドツアーでは、仮設を跳ね返される。しかし、そのフィードバックを持ち帰り、考え、もう一度行く。
- 三回目のワールドツアーでは、悪くないレベルにまでなった。
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このツアーを繰り返す中で、出会った人が、パートナーになってくれる(た)
- もちろん、本業があるので、最初は副業のような形が多い。
「〇〇の知識が無い、私はエンジニアじゃないから」
これらは全て言い訳だ。知識が無いなら知識をつけろ。技術がなければイノベーションは生まれない。創業者は技術の議論を出来る必要がある。技術に対するリスペクト・未知のドメインにのめり込み、跳ね返されても何度も考え、足を動かす本気度が、人を動かす。技術者を動かすんだと感じた。
実現 = 思考 × 行動
- 実現に必要な因数は、思考と行動
- 最大の実現を成し遂げるためには、最大の思考(頭がちぎれるほど考え)と最大の行動(足がちぎれるほど動く)が必要
- 「言い訳せず、考え、実行する」→技術/お金/人 全てがネットで手に入る時代に言い訳するな
- 「政府(法)の壁がある」→ 年々政府のスピードは早くなっている。レギュレーションは常に技術と共にある。言い訳せずに、技術を磨き、足を運び、唱え続ける。
リーダーシップ = TOPの日々の意思決定
- 社員は大~小まであらゆる日々の意思決定を見てTOPを評価している
- 社員は社長以上に声を上げることも、笑うこともできない。
- “社員以上”に考え、“社員以上”に動いているか。これが真の説得力。リーダーシップ。
雑に感想
- 足を動かし、考えること。40代から今の会社をスペースデブリという分野で創業し、創業期には海外に足を運び、今や国連や政府に講演を行うほどの岡田さんだからこそ、異常な説得力があった。
- 創業から英語を使う意義についても、実際に日本語で負けた岡田さんだからこそ、異常な説得力があった。
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一貫して、全てに説得力があり、熱量があり、非常に刺激的な講義だった。また、一橋の学生に対しても、自分が今後若い人間に負う未来を想定し、真剣に向き合うと仰っていて、若者に対するリスペクトを感じた。
- 全ての政治を担う人間、業界の上に立つ人間にあるべき態度だと思った。
- 自分もこの意識を忘れないようにしたい。